2009年から、ここ国立本店で新しくスタートした『本のしごと研究室』では、隔週でゲストを招いて本とのつながりを考える、『本のしごとトーク』を
行っています。
その『本のしごとトーク』第10回目が、5月30日に行われました。
今回のゲストは白井明大さん。
白井さんの名刺には、「詩人 コピーライター」と書かれています。「詩」と「コピー」、同じ言葉を使うものですが、対極にあるものという印象がありま
す。白井さんにとって詩とは? コピーとは? どのような思いで、日々向き合っているのでしょう。

白井さんは、もともと法律の勉強をしていたのですが、ひたすら勉強に打ち込む日々の中、周りのデザイナーの友人などが無性に格好よく見えたそうです。そ
ういう世界に憧れ、27歳の時に法律の勉強を止め、たまたま求人のあった広告プロダクションに入社、コピーライターになりました。いきなりコピーライ
ターになったため、当初は苦労したけれど、だんだんと自分なりの言葉のおさまりが解ってきたといいます。
コピーライターの仕事というのは、まずクライアントありきの商業の上に成り立つもの。商品について書き、それは万人に理解できる言葉でなければなりませ
ん。雰囲気ではなくロジカルに書き、クライアントを説得させるという作業も重要です。
一方、詩人としての出発点は、2002年に『無名小説』という自身のホームページを作ったことがきっかけでした。詩に対する興味が強くなったのは、コ
ピーライターになって2年目に、貞久秀紀さんの詩と出会ったことが大きかったそうです。
身近な暮らしの中から生まれてくる白井さんの詩は、どのような思いで書かれているのでしょうか。
「『反戦』と言わない反戦詩という意識が強い」という答えが返ってきました。
詩人に問われていることのひとつに、兵士が死ぬ直前に見る、落ちていた紙切れに書かれていた詩とはどんなものか、ということがあるそうです。
白井さんの詩には、誰にも奪われたくないささやかな日常、そういうものを大事にしたいという思いが込められています。
「思いと言葉が同時に出る」という白井さん。
文章を書くのが苦手な私のような人間からみると驚愕(!)の事実ですが、画家にとっての画や音楽家にとっての音楽と同じことで、表現手段の違いなのだと
改めて感じました。
「自分の心が動いているから書く。好きなものだし大事なものだから書く」という姿勢は、いたって自然で共感します。
詩と本の関係については、白井さんにとって、ホームページは詩の最初の段階のもので、詩集は詩の最終稿という意識があるそうです。本でなければできない
表現があるので、大事にしたいといいます。
また、おみくじやサイコロなど、遊び心のあるいろいろな形での表現も試みています。
アウトプットする手段は、詩でもコピーでも小説でもよくて、境界を決めてしまうのではなく、超えるのが楽しい。詩もコピーも、どちらが上で下ということ
はないけれど、軸足は詩に置いているそうです。
小さな頃からトルストイや吉本隆明を読まされていた(!?)という家庭環境、法律の勉強で培われた論理的思考や文章力といったものも、白井さんの言葉力
に影響しているのだと思います。
言葉の世界に疎い私は、今回、未知の世界を覗けて興味津々でした。読書会や合評会など、いろいろな活動があるのですね。インターネット(ケイタイ含む)
のおかげで、女子中高生など一般人の言葉のスキルが上がり、一般人の現代詩のレベルの底上げになっているというお話も、興味深かったです。
「詩なんて、なんでもいいんです。好きな詩を真似したり、メモすることから始めてもいいし、やり方は何でもいい。書きたいものを自然に書く。結局はその
人の詩になります」とにこにこ語る白井さん。
受け取る側も、ヘンに構えず自由に楽しみたいものです。

*今回うっかりしていて、大村さん特製給食の写真を撮りそこねてしまいました…。グリーンピースの豆ごはん、焼き茄子、イカのフリッターなどなど、今回
も美味しかった!ごちそうさまでした。
本のしごとトークは、今回で前期日程が終了。次回は7月18日から後期日程がスタートします。ゲストは内沼晋太郎さんをお迎えします。
レポート:本のしごと研究室 研究員 芳賀八恵

















