2009年から、ここ国立本店で新しくスタートした『本のしごと研究室』では、隔週でゲストを招いて本とのつながりを考える、『本のしごとトーク』を行っています。
その『本のしごとトーク』第11回目が、7月18日に行われました。
今回のゲストは、ブックコーディネーターの内沼晋太郎さんです。
これまで沢山の『本と人との出会いを仕掛けて』いる内沼さんですが、今回のトークショーでも、一人一冊、お薦めでしかも誰かにあげてもいい文庫本を持参し、トーク中にどんどんメモをし、最後に誰かと交換する【文庫メモシェアリング】という仕掛けで、今夜しか生まれ得ない特別な本と出会うことになりました。いったい、こういった仕掛けをビジネスとして成り立たせている秘訣はなんでしょうか?
「本屋以外の場所や、これまで本を置く場所と一般的に考えられていなかった場所に本を置いています。」とおっしゃる内沼さんの言葉通りこれまで手掛けてきたプロジェクトは、そういうのもありなんだ!と思わせるものばかり。そのうちのいくつかを紹介いただきました。
まずは、【文庫本葉書プロジェクト】
古本の文庫本をクラフト紙で包み中の一節の引用文だけを見せる。その為、嫌いな作家や普段は読まないような本との「偶然の出合い」があり、また、誰かに贈った場合は、後に「何の本だった?」などといった一風変わったコミュニケーションも楽しめる。
つぎは【TOKYO HIPSTERS CLUB】
これは原宿にあるコンセプトストア。大学でブランド論を専攻していた内沼さんにとっては、「まさにブランディングのプロジェクト」とのこと。例えば、チェ・ゲバラのTシャツを、彼の思想への理解なしに着て歩くことは恥ずかしいことではないか?服を選ぶことは自己表現のひとつ、というブランドの伝えたい思想を「プロダクトとしての本」はその内容のみならず、その装丁やタイトルからも緻密にコントロールでき、そして、これに関するノウハウが内沼さんにとって、ビジネス的な成果の証明となっているとのこと。
なるほど。従来の本以外の可能性を見出し、そこにしっかりとした価値や役割を与え、ビジネスとして成り立たせていることに感心するばかりです。
そして、最後は【文庫本セット】です。
これは、青山にあるスパイラルカフェでのプロジェクト。「本日のケーキセット」のように「今月の文庫本セット」という形で出されるそうです。考えてみれば、「珈琲と本」という組み合わせは定番中の定番なのに、新しい印象を受けます。「本日のケーキは何ですか?」と聞くように、「今月の文庫ってなんですか?」というのは、なんだかいい感じですね。
このような活動を、内沼さんは『人と本との間をデザインする』という言い、特に本好きではない人たちにも、必ずその人たちに響く角度があるはずで、本というモノはその多様性に対応できる媒体なんだということを改めて気づかせてくれました。

さて、内沼さんは『どのようにして本の仕事をすることになった』のでしょう?
当初の目標は、なんとミュージシャン!しかし、大学生のときに自作の曲を聴き「自分だったら買わないな…」と思い至り方向転換。情熱は本に向かう。大学卒業後は、某国際見本市主催会社に就職するも2ヶ月で退職。その後、往来堂書店で4年間勤務のほか、テレアポや運転手など様々なアルバイトを経験。フリーでウェブデザインやグラフィックデザイン・ライターをしつつ、さまざまな「本まわりプロジェクト」をこなすうちに、現在に至る。
そんな内沼さんのお薦めする働き方は「お金をもらう仕事」と「お金をもらわない仕事」を両方やること。「前者」はあくまで「クライアントのやりたいこと」、ビジネスです。しかし、「後者」であれば、「自分のやりたいこと」ができます。資本主義経済の枠の外に飛び出すことができるからこそ、既存の概念に縛られない発想や試みが出来るというわけです。「前者」を屋台骨とし、「後者」をフル回転させることで、「後者」にもビジネスチャンスが生まれてくる可能性もあり、その両者のバランスをうまく取りつつ操業するとのこと。
なんだか、秘訣の一旦を垣間見れたような気がしました。「現実家でありながら理想家」その逆も然り。というのが、今回のお話を聞いた後の、内沼さんへの印象でした。そして、そのバランス感覚がとても長けているのは言うまでもありません。
内沼さん初著書『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』では、今回のトークショーから更に広がったお話が載っていて、とてもお薦めです。(私も買いました笑)ぜひ、お手にとってみてください!http://abookof.numabooks.com/
次回8月1日(土)のゲストは、上島明子さんです。
レポート:本のしごと研究室 (新入り)研究員 澤田 舞

















