『本のしごと研究室』では、隔週でゲストを招いて本とのつながりを考える、『本のしごとトーク』を行っています。
第13回目が、8月15日に行われました。
今回のゲストは波多野光さん。
イラストレーターとして活動する一方、ギャラリーのオーナーとしても場所づくりをしてきた波多野さんの、これまでの歩みや仕事の仕方などについて伺ってみました。
京都出身の波多野さんは、デザイン科を卒業後、大阪のグラフィックデザインの事務所に勤務。このデザイナー時代に、ただ作りたくて自分で本を作っていたそうです。鉱物をテーマにした『inorganic』、言葉とイラストが綴られた小さな本『Nega』『Papapa』は、いずれも丁寧に一冊ずつ作られた、波多野さんの原点のような作品。これらの作品を周囲のアート・ディレクターなどに見せたことがきっかけとなり、イラストレーターとして売り込み活動をすることになります。
ちょうど東京へ出ることになり、売り込み方法もよくわからなかった波多野さんは、いきなりHBギャラリーで個展を行ないます。この初個展で原研哉氏と出会い、その後、『一冊の本』で長い間仕事をすることになります。

例えば、コンペなどで入賞し、スムーズにブレイクするイラストレーターもいますが、波多野さん自身はそういうタイプではなく、地道に自分で動くしかないという気持ちだったそうです。ぽつぽつと仕事をもらうようになり、イラストも描いていくうちにだんだん変化していったといいます。
2003年からは、学芸大前にギャラリー「tray」をオープン。もともと人見知りだという波多野さん曰く、「苦手を克服するための修行の場」。いろいろな人が集まるリアルな場所を持つ、ということが目的でした。ここでは人のつながりが生まれ、どんどん広がっていくと同時に、イラストの仕事も軌道にのっていったそうです。
今回のトークでは、イラストレーターが本の仕事をする際の進め方を、具体的に説明してもらいました。
まず、仕事の依頼は、出版社(編集者)やデザイナー、作家からであったり、イラストも、既にあるオリジナル作品を使用する場合と、新たに書き下ろす場合があります。ゲラを読んで描く必要のある場合もあれば、読む必要のない時もあるそうです。依頼内容に合わせ、ラフを何案か提出し、そこから実際の制作作業に入ります。
ちなみに、波多野さんのイラストは水彩なのかと思っていたら、アクリル絵具を薄め、水彩のようにして使っているそう。仕上がりのマット感は、やはりアクリルならではの質感で、納得です。

波多野さんは、原画を惜しげもなく、たくさん見せてくれました。実際の書籍と原画とを見比べると、これがこういうふうになるのか、と大変わかりやすく、イラストの力とデザインの力というものを改めて感じました。
「イラストレーションの仕事は、依頼主の意図を読み取って、絵で応えること。書籍の内容からどの部分を絵の題材にするかを考える作業は、感想文を書くのと似ている」という波多野さん。制約の中で、いかに自分の絵でどう応えるか、が醍醐味だそうです。
イラストは素材であって、原画に忠実でなくてもデザイナーの意図に沿っていればいい、という考え方は、やはり波多野さんがデザイナー出身だからでしょうか。書籍は、本の形になって初めて読者の手に渡るものだという当たり前のことを、再認識しました。
今回は、実際にギャラリーtrayを利用したり、行ったことがあるというお客さんも多く、ここにも波多野さんの周りの人の輪がありました。
trayは今年、学芸大前から参宮橋へと移転し、新たなスタートを切りました。
何かできないか、と常に考えているという波多野さん。イラストレーターとしての活動と、場所を持つということが、いい具合に相互作用して動いていて、これからの活動もますます楽しみです。
*今回の大村さん特製給食は、お盆の中日ということで、殺生なし(?)の野菜中心のメニューでした。大豆のコロッケ、ラタトゥイユなどなど。
ごちそうさまでした!
レポート:本のしごと研究室 研究員 芳賀八恵

















