『本のしごと研究室』では、隔週でゲストを招いて本とのつながりを考える『本のしごとトーク』を行っています。
第14回目が8月29日に行われました。
今回のゲストは、折形デザイン研究所主宰 山口信博さんです。
●「紙袋を折りかえる」
ワークショップからはじまった『本のしごとトーク』は、「紙袋を折りかえる」というテーマで、どこにでもある身近な白い紙袋の山折りと谷折りを変え、新しい形を探すというもの。ルールは一つ、側面の直角二等辺三角形の折りを一つの単位として、山折り・谷折りを繰り返したり、折りかえしたりました。みなさん無心に作っていました。


ワークショップでの作品の一部
●本のデザイン
山口さんは本の仕事がくると、撮影の立会いや、著者の仕事・住まい環境を見て食事を一緒にするそうです。そうすることで、「一体感」のような親身な気持ちになり、自分のデザインを押し付けることをせず、自ずと形ができていくそうです。
実際の制作は、絵を描くデザイナーとは着想が異なり、文字や写真の大きさを考えながら、使い方のルールを決定するグッリド作成から。「これには相当な時間をかけます。ただ、この秩序の構築をあまりに論理的にしすぎていくと、偶然が入り込む余地がなくなり、活き活きした感じがでなくなる。たまたま配置したレイアウトがよかったりするんです」という山口さん。秩序の中に偶然が入り込んだ、凛としながらも風通しのよいデザインは、こんな風にできていたんですね。
●俳句
俳句をはじめて20年という山口さんは、句会での体験が、それまであまり意識していなかったことを考えるきっかけになったそうです。
その体験とは、一人幾つか句を作った後一旦それを集め、その中から一人一つ良いと思ったものを選び読み上げる、この黙読から朗読に変わった時に、自分ではあまり意識していなかった句を、誰かが声にした時に良い句だと気づいたことが、山口さんにとってはショックな体験だったそうです。
「声という物質になると、いろんなことが明らかになる。俳句とは、読み手によって完成されるもの、自己完結している表現ははだめ」という山口さん。これはどんなことでも言えることなのかもしれません。
●折形デザイン研究所
室町時代から伝わる、伝統的な贈答の礼法「折形」を研究しはじめたきっかけは、神保町である本を見つけた時。この時山口さんは、200年前の人から手紙をもらったような感覚だったそうです。
「折形」の秩序ある美しさをモダンデザインとして捉えなおし、今に活かせる「折形」を探求する研究所。著書に『礼のかたち』『折る、贈る。』(共に2003年、ラトルズ)、『半紙で折る折形歳時記』(2004年、平凡社)があります。それとは別に、展覧会等を行うときは必ず小冊子を作るようにしているそうです。
「もしかしたら自分の作った冊子や本が、100年後の人に届くかもしれない」その言葉がとても印象的でした。

「紙袋を折かえる」小冊子
言葉を選びながら控えめに語る山口さんの本のしごとトークは、山口さんの作品同様に、緊張感と心地良さのあるものでした。


給食のメニュー:蒸し鶏と水菜のサラダ ゴーヤのおひたし ゆでたオクラとラディッシュは、本店店長 和久さんの作ったお塩でいただきました
レポート:本のしごと研究室 研究員 神田沙耶香

















