『本のしごと研究室』では、隔週でゲストを招いて本とのつながりを考える『本のしごとトーク』を行っています。第17回が10月10日に行われました。現在「東京の庭」「東京の庭baum」「たまもの」の三誌のフリーペーパーを発行したデザインユニットのcocon制作室。チーム編成は元同僚の女性3人。今回は主にデザインと執筆を担当の高木多恵子さんに来て頂き、これまでを語ってもらいました。
≪第17回ゲスト cocon制作室 高木多恵子さん≫
中学生の時から現在も青梅に暮らしている高木さん。
学校を卒業して選んだ職業は印刷会社のDTPオペレーターでした。広告のデザインを仕事として覚えていき、美術大学の通信講座も受けたりしながらデザインへの興味はますます深まっていったそうです。そんな中、並行して沸々とわき上がる思いがありました。
それは、小さいころから大好きな、“本” を作ってみたいという思いです。
そこで、高木さんはそれまで働いていた会社をやめ、同僚や仲間と6人で地元・青梅にアトリエを借りて、その場所を拠点に印刷物作りの活動の第一歩を踏み出します。
一番最初に作ったフリーペーパー『kiwwi』は、テーマを決めず、メンバー各自の興味のおもむくままのページ作りをしました。その時は、インクジェットプリンタとカッターとホチキスを駆使して家内制手工業でした。そんな活動を手探りでしているうちに、徐々に現在のcocon制作室(高木さん、島崎さん、高橋さんの3人組デザインユニット) が結成され、作る媒体のテーマも青梅や奥多摩の魅力を伝える方向に固まっていきました。
ターゲットは地元に住む人々。都心に通っている地元住民に、もっと奥多摩のイイ所(地域の商店街や散歩スポット)を知ってほしいという思いがありました。ところが、デザインの知識はあっても、出版の仕組みは全くわからない所からのスタートです。
そんな中で訪れた出会い。その当時たまたま出展したデザインフェスタの会場で、彼女たちは偶然、奥多摩在住の木工作家さんに出会います。地元が一緒ということもあり、色々と話をするうちに、その方から、“奥多摩まちづくり・ひとづくり支援事業”を知ります。それは、町を活性化する企画を提案し、通れば町の助成金で活動できるというものでした。自分達のやろうとしていることとまさに合致。ふってきたチャンスに迷うことなく応募を決めた彼女達でしたが、なんとあろうことか知ったのは締め切りの2日前。しかし、そんなピンチにもめげずに徹夜で企画書を仕上げて提出しました。
その後、地元住民による審査を無事通過し、奥多摩の人にとっても、都心の人にとっても“庭”のような存在になりたいという思いをこめて名付けた、フリーペーパー『東京の庭』は創刊されました。
こうしてはじめての本格的な冊子作りに奮闘したcocon制作室。奥多摩の魅力を集めているうちに、取材した人から、あの場所はいった?と次の取材先につながる情報をもらったり、知り合いの印刷屋さんが安くて良質な紙を見つけてくれたりと、創刊号が出来上がるまでに、色々なうれしい協力があったそうです。
その時のことを高木さんは、
「3人で作ろう!と決めたとたん、ぐるぐる出会いがつながっていって、ずーっとミラクルな感じがしてました。」 と言います。

流れに乗って3号発行した「東京の庭」。週5日はcocon制作室として広告などのデザインの仕事をうけおいながら、土日でフリーペーパーの取材。仕事を持ちながらもフットワークを保てたその原動力は、“記事をきっかけに街のみんながつながればいいな”の思いでした。
そのあとも「東京の庭」に続いて、東京都の多摩産材利用拡大事業の補助金によって発行したフリーペーパー「東京の庭baum」(東京の山と木がテーマ)を2号、奥多摩身近なまちづくり推進事業の助成でフリーペーパー「たまもの」(奥多摩の暮らしがテーマ)3号を発行。
助成金をもらって制作することにはプレッシャーもあったそう。でも、それによって公共の視点も個人の視点も持ちながら取材できたのは、冊子のさらなる魅力につながったそうです。
cocon制作室は、企画会議をしたら全員で取材に行くスタイルを敢行しています。それは、メンバー全員がただ純粋に興味のある場所に行きたいから(笑)だそうですが、そのため取材中もトークは途切れることはなく、「地元のおじいさんにインタビューをしていたら6時間も経ってた」なんてこともあるそう。そんな時は家のごはんをご馳走になることも。
高木さんは、ハッピースマイルの持ち主。確かに、こんな笑顔で、うんうん。と話を聞いてくれたら、自分の中のとっておきエピソードも、あれよあれよと披露してしまいそうです。
フランス語で「繭」の意味のcocon。
『cocon制作室』 の名前の由来は、最初のアトリエが織物工場だったから、それにちなんで“自分たちも繭から育っていこう”という思いを込めたんだそうです。
7冊のフリーペーパーの発行を経て繭から飛び立った彼女達。今後はフリーでない出版物にも目を向けています。どんなスタイルで?どんなテーマで・・・? そのアイデアにはこれからも目が離せません。

〈感想〉
“自分のふるさと、または今住んでいる街を、何らかの活動を通してもっと元気にしたい。人と人とを繋げたい。” このような思いは、きっと多くの人が心の中に持ち得ているものではないでしょうか。だけど、それをほんとに実現させるのは、熟練した技でも経験でもなくて『ゆるぎない熱』なんだよなぁー、とお話をきいて改めて感じました。着火したら早い、cocon制作室さん。これからも、たのしみにしています。


























